<h2>禁忌</h2>
次の患者には投与しないこと
1.アルドステロン症の患者
2.ミオパチーのある患者
3.低カリウム血症のある患者
(1~3:これらの疾患及び症状が悪化するおそれがある)
<h2>小青竜湯の効果・適応症</h2>
①下記疾患における水様の痰、水様鼻汁、鼻閉、くしゃみ、喘鳴、咳嗽、流涙に使用します。
気管支喘息、鼻炎、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、感冒
②気管支炎
成人では、1日に9.0gを2~3回に分割して、食前または食間(食後2時間)に水、または白湯でのむか、またはお湯に溶かして飲みます。
<h3>耳鼻咽喉科領域への小青竜湯の効果</h3>
小青竜湯は体力中程度の人で、喘鳴、咳嗽、呼吸困難などの呼吸器症状や鼻症状を訴える場合に用いられます。泡沫水様性の痰、水様性の鼻汁、くしゃみ、鼻閉などがみられる場合に適しています。
花粉症を含むアレルギー性鼻炎に対する漢方薬の第一選択薬といわれています。明らかに虚証でない限り幅広く使用が可能な処方になります。
小青竜湯は抗アレルギー作用、抗炎症作用が明らかになっており、『鼻アレルギー診療ガイドライン』では、アレルギー性鼻炎治療薬の1つとして取り上げられています。
アレルギー性鼻炎に使用される主な漢方処方は以下のようになります。
体力程度順に実証→虚証の順で記すと、越婢加朮湯(28)(麻黄剤)、麻杏甘石湯(55)(麻黄剤)、葛根湯加川芎辛夷(2)(麻黄剤)、小青竜湯(麻黄剤)、苓甘姜味辛夏仁湯(119)、麻黄附子細辛湯(127)(麻黄剤)となります。
実証では麻杏甘石湯(55)が、麻黄が合わない人には苓甘姜味辛夏仁湯(119)、虚証では麻黄附子細辛湯(127)が良く用いられます。越婢加朮湯(28)は鼻炎の適応はありませんが用いられています。この中では、小青竜湯が最も使用頻度が高くなっています。
他剤との使い分けとしては、小青竜湯は第一選択薬で、水様性鼻汁の場合に適し、越婢加朮湯(28)は鼻粘膜の発赤や温まると症状がひどくなる場合に適しています。麻黄附子細辛湯(127)は、虚証で冷えがある場合、苓甘姜味辛夏仁湯(119)は小青竜湯では胃腸障害を起こしてしまう場合に適しています。
また、アレルギー性鼻炎以外の呼吸器系の症状でも同様に、体力があるタイプで咳がひどい場合は麻杏甘石湯(55)、虚証で小青竜湯では胃腸障害を起こすタイプでは苓甘姜味辛夏仁湯(119)、
鼻漏や鼻閉はないものの、咳がひどく喉がイガイガして痰が切れにくいタイプでは麦門冬湯(29)が用いられます。
なお、アレルギー性鼻炎などに対して、各種の抗アレルギー薬も使用されますが、一般に抗ヒスタミン薬による治療の場合は、眠気や口渇を訴えることが多く見られます。
これは、抗ヒスタミン薬が末梢(鼻などの症状のあるところ)だけでなく、脳内のヒスタミンH1受容体にも阻害的に作用することにより中枢抑制作用として眠気などが起こると考えらえています。
一方で、小青竜湯は大脳皮質におけるヒスタミンH1受容体に対する影響はみられなかったことから非常に用いやすい薬剤であることが示唆されています。
<h2> 小青竜湯の副作用・証が合わない場合の症状</h2>
副作用
小青竜湯には甘草が含まれており、稀な副作用として偽アルドステロン症を起こす可能性があります。
偽アルドステロン症の症状としては、低カリウム血症をおこし、血圧増加、むくみ、体重増加などが表れることがあります。
さらに低カリウム血症の結果として、ミオパチーを起こす可能性があります。症状としては、脱力感、手足のけいれんなどがあります。
肝機能障害や黄疸が現れることがあります。その他、過敏症が起こる可能性があります。
小青竜湯は過敏症が起こる可能性があります。発疹、発赤、そう痒などがあらわれた場合には、使用を中止してください。また肝機能を示す血液検査値の異常が見られることがあるため、その場合は使用を中止してください。
証に合わない場合
小青竜湯は体力中程度の人に用いるため、病後の衰弱期、著しく体力の衰えている患者では、副作用があらわれやすくなり、その症状が増強される恐れがあります。
著しく胃腸が虚弱な患者では、食欲不振、胃部不快感、悪心、嘔吐、腹痛、下痢等があらわれることがあります。
食欲不振、悪心、嘔吐のある患者では、これらの症状が悪化する恐れがあります。
発汗傾向の著しい患者では、発汗過多、全身脱力感などがあらわれることがあります。
狭心症、心筋梗塞等の循環器系に障害のある患者、またその既往歴のある患者、重症高血圧症の患者、高度の腎障害のある患者、排尿障害のある患者、甲状腺機能亢進症の患者では、これらの疾患や症状が悪化する恐れがあります。
甘草が含まれているので血清カリウム値や血圧値等に十分留意し、異常が認められた場合には投与を中止することが必要になります。
他の漢方製剤を併用する場合は、含有生薬の重複に注意が必要です。
<h2> 小青竜湯の生薬の組み合わせ、なぜその生薬が選ばれているか</h2>
半夏(ハンゲ)、甘草(カンゾウ)、桂皮(ケイヒ)、五味子(ゴミシ)、細辛(サイシン)、芍薬(シャクヤク)、麻黄(マオウ)、乾姜(カンキョウ)の8種で構成されており、麻黄剤の1つになります。
構成生薬の一部である桂皮、甘草、麻黄の3つに杏仁を加えたものが麻黄湯(27)、構成生薬の麻黄と細辛に附子を加えたもものが麻黄附子細辛湯(127)となり、症状や体力により使い分けされます。
麻黄と桂皮は組み合わされると、発汗、抗炎症、鎮痛の効果が強まり、甘草は副作用を除く目的で加えられています。細辛には鎮痛、咳や呼吸困難の改善効果、半夏には、咳や呼吸の改善、去痰作用、芍薬には鎮痛、鎮痙作用があります。
小青竜湯は水様の鼻汁や水様の痰、湿性の咳など湿性の症状に対して効果がありますが、上記の生薬の組み合わせにより、湿性の咳には潤す作用のある杏仁が入っている麻黄湯(27)よりも効果が期待できると言われています。
<h2> 小青竜湯のまとめ</h2>
小青竜湯は比較的体力の程度を選ばずに使用が可能な漢方処方です。現在、花粉症などのアレルギー性鼻炎には非常に多くの人が悩まされてます。そうした場合、抗アレルギー剤が多く使われており、最近では眠くなりにくいタイプのものがみられるようになってきましたが、それでも眠気の副作用の報告があるようです。
小青竜湯は胃腸障害さえ出ないのであれば効果的であると言われています。また、妊娠中の花粉症の治療についても小青竜湯や苓甘姜味辛夏仁湯(119)については医師の指示のもと使用されるケースも多く見られます。
アレルギー性鼻炎の治療への選択肢の一つとして覚えて欲しいと思います。
証の判断・漢方薬の選択に悩む場合は長崎クリニック浜町漢方外来までぜひご相談ください。