排膿散及湯(ツムラ122番):ハイノウサンキュウトウの効果、適応症

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排膿散及湯の効果、適応症

排膿散及湯(はいのうさんきゅうとう)は、患部の膿(うみ)を排出させ、炎症を鎮めることで腫れや痛みを改善する漢方薬の一つです。皮膚や粘膜において赤く腫れて熱をもち、ずきずきと疼くような化膿症状に対して効果が期待できます。いわゆる「熱毒(ねつどく)」(体内にこもった炎症性の熱)を取り除き、滞った膿を押し出す作用が特徴で、化膿による腫れものの治癒を促進します。以下のような症状・疾患に用いられることがあります。

  • おでき(癰・疔など)が赤く腫れて熱感があり、押すとズキズキ痛む
  • 慢性副鼻腔炎(蓄膿症)で鼻や頬に膿がたまり、圧迫感や痛みがある
  • 歯茎が腫れて膿が出る(歯周病・歯根の感染など)状態で、患部がうずくように痛む

このように、排膿散及湯は 患部が赤く腫れて膿んでいるような炎症をしずめ、膿の排出を助ける処方です。比較的体力があり、炎症による痛みが強い方に適するとされています。抗生物質の登場以前から、化膿を伴う様々な症状(皮膚の腫れものや中耳炎・副鼻腔炎など)の改善に用いられてきました。現代でも西洋医学的な治療(抗生剤や切開排膿など)と併用して、患部の治りを早めたり慢性的な膿による不調を和らげたりする目的で用いられることがあります。

よくある疾患への効果

皮膚の腫れもの(おでき・にきび等)

皮膚に細菌感染が起こり膿を持ったおでき(癰よう)やフルンケル(せつ)と呼ばれる腫れものに対して、排膿散及湯は炎症と痛みを鎮め、膿の排出を促進する効果があります。例えば、毛穴の感染によるおできや、顔面のにきびが化膿して赤く腫れているようなケースで、本方を服用すると次第に腫れの熱っぽさが引き、疼く痛みが和らいできます。また膿が溜まっている場合は膿が出やすくなり、傷の治りが早まることが期待できます。抗生剤だけでは繰り返しやすい慢性的な皮膚の化膿症にも、体質改善を兼ねて用いられることがあります。なお、膿が深部まで及ぶ大きな膿瘍では、漢方治療と並行して適切な外科的処置(切開排膿など)も必要です。

慢性副鼻腔炎(蓄膿症)

鼻の奥の副鼻腔に膿が溜まる蓄膿症(ちくのうしょう)では、頬や額に重苦しい痛みや圧迫感、鼻づまり、膿性の鼻汁などの症状が続きます。排膿散及湯は、副鼻腔内に滞った膿の排出を助け、粘膜の腫れや炎症を和らげる目的で用いられることがあります。鼻や喉の粘膜の炎症を鎮める生薬(桔梗や甘草など)により、膿による不快なにおいや鼻閉が改善しやすくなり、頭重感の軽減が期待できます。ただし、症状や体質によっては荊芥連翹湯(50)など他の蓄膿症向け処方が選択される場合もあり、専門家による判断が重要です。抗生剤で効果が不十分な慢性副鼻腔炎の補助療法として、本方を併用するケースもあります。

歯・耳の化膿症(歯周病・中耳炎 など)

排膿散及湯は、口腔や耳の局所感染による炎症にも応用されることがあります。例えば歯周病(歯槽膿漏)で歯茎が腫れて膿が出ている場合、患部の炎症と痛みを和らげ、膿の排出を促すことで歯茎の腫れを改善する助けとなります。また、慢性中耳炎で鼓膜に穴が開き膿が出ているようなケースでは、痛みや腫れを抑え、排膿を促進する目的で処方されることがあります。これら耳や歯の感染症では西洋医学的な治療(抗生剤の投与や洗浄処置)が中心ですが、排膿散及湯を併用することで症状の緩和や治癒の促進が期待できる場合があります。特に慢性化して炎症が長引いているケースでは、体質から改善を図る漢方が有用なこともあります。

同様の症状に使われる漢方薬との使い分け

化膿を伴う症状には、排膿散及湯以外にもいくつか漢方薬が用いられます。症状の程度や体質に応じて処方を選び分けることが大切です。ここでは、排膿散及湯と比較されやすい処方をいくつかご紹介します。

十味敗毒湯(6)

十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)は、皮膚の化膿性疾患や湿疹・蕁麻疹など幅広い皮膚トラブルに用いられる代表的な処方です。文字通り10種類の生薬で体内の「毒」を敗(やぶ)る処方で、発汗・利尿作用により皮膚表面の炎症や腫れを鎮めます。排膿散及湯と比べると、十味敗毒湯は比較的体力が中程度以下の人にも使いやすく、にきびや湿疹など皮膚全体に広がった炎症に適する処方です。一方で強い膿を押し出す力は排膿散及湯ほどではないため、おできがしこりとなって膿がこもっている場合には排膿散及湯の方が効果的なことがあります。症状が肌表面に散在しているか、局所に膿が集中しているかで使い分けられます。

荊芥連翹湯(50)

荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)は、慢性副鼻腔炎(蓄膿症)や慢性扁桃炎、にきびなどにしばしば用いられる処方です。連翹(レンギョウ)や桔梗など清熱解毒作用を持つ生薬が含まれ、膿や炎症を徐々に改善していく効果があります。排膿散及湯と比べると、荊芥連翹湯は体力中等度の方向けで、膿による腫れ・痛みが中程度の慢性症状に適しています。鼻や喉にこもった膿を出しつつ粘膜の腫れを引かせるのに優れ、蓄膿症の基本薬の一つです。急性期の強い痛みや腫れには排膿散及湯の方が即効性がありますが、慢性的に繰り返す炎症には荊芥連翹湯で体質から改善を図ることが多くなります。

黄連解毒湯(15)

黄連解毒湯(おうれんげどくとう)は、体の強いほてりや出血傾向、不眠など全身的な「熱毒」症状を鎮める代表的な苦味の強い処方です。黄連・黄芩・黄柏・山梔子という4つの苦寒性生薬を主体としており、激しい炎症や高熱を速やかに冷ます効果があります。皮膚の化膿にも用いられ、例えば顔面のひどいにきびや蜂窩織炎(ほうかしきえん)のように、広範囲が赤く熱を帯びている場合に適します。ただし、黄連解毒湯は熱を冷ます力が非常に強い反面、膿を排出させる作用や痛みを和らげる作用は限定的です。また、体力が低下して冷えがある人には不向きです。局所の膿を出すには排膿散及湯、全身に及ぶ強い熱毒を抑えるには黄連解毒湯というように、症状の局在と体力に応じて使い分けます。

清上防風湯(58)

清上防風湯(せいじょうぼうふうとう)は、顔面のにきびや皮膚炎によく用いられる処方です。その名の通り「上部の炎症を清め、風を散らす」薬方で、顔や首にできた赤く膿を持つ吹き出物を改善します。石膏や黄連など熱を冷ます生薬と、防風や荊芥など炎症を発散させる生薬を組み合わせ、比較的体力のある若年〜中年の方の頑固なにきびに適しています。排膿散及湯と比べると、清上防風湯は皮膚表面の炎症を鎮めることに優れ、複数のにきびがあるようなケースで用いられます。一方、膿が深部に溜まった大きなおできに対しては、清上防風湯よりも排膿散及湯の方が直接膿を出す効果が期待できます。症状が表在的か深部に及んでいるかで処方が使い分けられます。

副作用や証が合わない場合の症状

排膿散及湯は炎症を鎮める比較的マイルドな処方ですが、体質に合わない場合や長期間・大量に服用した場合、副作用が現れる可能性があります。

  • 消化器症状:食欲不振、胃もたれ、吐き気、軟便・下痢など。生薬に含まれる苦味や刺激によって胃腸がもたれたりゆるくなったりすることがあります。普段から胃腸の弱い方は、服用中に強い胃の不快感や下痢が続く場合、一旦中止して医師に相談してください。
  • 皮膚症状:発疹、かゆみ、蕁麻疹(じんましん)などのアレルギー反応がまれに起こることがあります。服用後に皮膚に異常を感じた場合も、速やかに専門医にご相談ください。
  • 重篤な副作用:排膿散及湯には甘草(カンゾウ)が含まれます。甘草を長期間大量に服用したり、他の甘草含有製剤と併用したりすると、血中カリウム低下による筋力低下や高血圧(偽アルドステロン症)を引き起こすおそれがあります。顔や足がひどくむくんできたり、脱力感・血圧上昇がみられた場合は、すみやかに服用を中止し医療機関を受診してください。

また 体質(証)が合わない場合、十分な効果が得られないばかりか症状が悪化することがあります。例えば冷えが強く患部があまり赤くならない陰証の腫れもの(体力虚弱で膿が溜まっても炎症反応が乏しいタイプ)に排膿散及湯を用いると、患部がかえって引いてしまって膿を出し切れなかったり、全身の冷え・だるさが増すことがあります。そのため、膿がはっきりせず青白く腫れているようなケースには適さない処方です。このような場合には、逆に患部を温めて膿を熟させる陽和湯など別の漢方薬が検討されます。

併用禁忌・併用注意な薬剤

排膿散及湯には麻黄や附子のような強い刺激性の生薬は含まれておらず、絶対的な併用禁忌とされる薬剤は多くありません。ただし、以下のような場合には併用に注意が必要です。

  • 利尿薬や副腎皮質ステロイド剤との併用:排膿散及湯の抗炎症・利水作用および甘草の作用により、利尿薬(例:フロセミドなど)やステロイド剤と一緒に服用するとカリウムが失われやすくなる可能性があります。重ねて服用することで低カリウム血症を招かないよう、これらの薬を服用中の方は必ず医師に相談の上で使用してください。特に利尿薬と甘草の併用は偽アルドステロン症のリスクが高まるため注意が必要です。
  • 降圧薬や強心薬との併用:排膿散及湯の服用によって炎症が治まりむくみが取れると、血圧や循環動態が変化する場合があります。高血圧の薬(降圧薬)や心不全の薬(強心薬)を使用中の方は、漢方服用開始後の体調変化に注意し、必要に応じ主治医に経過を報告してください。特にジギタリス製剤を服用中の場合、甘草によるカリウム低下に伴ってジギタリスの作用が増強し、不整脈を起こすリスクがあります。医師の指示のもと慎重に経過観察を行うことが望まれます。
  • 抗凝血薬との併用:排膿散及湯に含まれる生薬(例えば芍薬や生姜など)には、血液の循環や凝固に影響を及ぼす可能性が指摘されているものがあります。ワルファリンなど抗凝血薬を服用中の方が本方を併用する際は、念のため定期的に血液検査を受けるなど慎重な管理が必要です。
  • 他の漢方薬やサプリメント:排膿散及湯と作用の似た生薬(例えば甘草や桔梗など)を含む漢方薬を併用すると、生薬成分が重複して副作用リスクが高まる可能性があります。また、サプリメント類との相互作用も考えられるため、自己判断での併用は避け、現在服用中の薬やサプリがあれば事前に医師・薬剤師に伝えてください。

含まれている生薬の組み合わせ、なぜその生薬が選ばれているか

排膿散及湯は、その名前が示す通り膿を排出することを目的として組まれた処方で、6種類の生薬から構成されています。基本的な処方構成は、「桔梗(キキョウ)」「枳実(キジツ)」「芍薬(シャクヤク)」「甘草(カンゾウ)」「生姜(ショウキョウ)」「大棗(タイソウ)」の組み合わせです。桔梗と甘草のペアは膿を出し痛みを和らげる働きがあり、そこに枳実・芍薬が炎症と腫れを抑え、生姜・大棗が全体を調和して効果を高めます。以下に各生薬の役割を詳しく解説します。

桔梗(キキョウ)

桔梗は膿を排出させ、喉や患部の痛みを和らげる作用を持つ生薬です。古くから「宣肺排膿(せんぱいはいのう)」といって、肺や喉に生じた膿を外に出す薬として用いられてきました。抗炎症・鎮痛効果もあり、患部の腫れや喉の腫れを鎮める働きがあります。排膿散及湯では主薬となる生薬で、局所に滞った膿を引き寄せて出しやすくする役割を担っています。また桔梗には生薬成分の通導作用(通りを良くする作用)もあり、他の生薬を患部まで行き渡らせる役目も果たします。喉の痛みや咳を和らげる桔梗甘草湯(桔梗+甘草)の組み合わせが本方の核となっており、膿んだ部分の治癒促進に欠かせません。

枳実(キジツ)

枳実はダイダイなど柑橘類の未熟な果実を乾燥させた生薬で、滞ったものを破り、固まったものを散らす作用があります。消化管の動きを促進し、腸のガスや痰の停滞を解消する作用がよく知られていますが、同時に局所の腫れやしこりを軟らかくする働きも期待できます。排膿散及湯では、患部に滞る膿や腫脹物を押し流すように排出させる手助けをします。さらに、枳実は苦味が胃腸の調子を整える効果も持つため、甘草・大棗と組み合わせることで処方全体を飲みやすくし、胃もたれを防ぐよう調整されています。つまり、本方における枳実は「膿の渋滞を砕く役割」「胃腸の調和」の二面で重要な役割を果たしています。

芍薬(シャクヤク)

芍薬は痛みを和らげ、炎症を鎮める作用を持つ生薬です。鎮痛作用に優れ、「筋肉の痙攣を緩める作用」もあることから、芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)では脚のこむら返りを治す薬として有名です。排膿散及湯では、患部の疼痛を和らげ腫れを落ち着かせる目的で配合されています。炎症によって周囲の組織がこわばったり緊張したりしている場合、芍薬がその緊張を解きほぐし、血行を良くすることで治癒を促進します。また若干の清熱作用(熱を冷ます作用)も持つため、桔梗や枳実とともに患部の赤みや熱感を沈めるのに寄与します。甘草との相乗効果で痛みを鎮める働きが強化されており、本方における「鎮痛役」と言える生薬です。

甘草(カンゾウ)

甘草は全体を調和し、炎症を鎮め、痛みを緩和する生薬です。甘味があり胃腸を保護する作用を持つとともに、「百薬の長」と称されるようにあらゆる処方に配合され副作用を和らげる緩和剤として働きます。排膿散及湯では、生薬間のバランスを整えつつ、抗炎症・鎮痛作用で患部の腫れを和らげる役割があります。例えば桔梗の排膿作用を助け、芍薬の鎮痛作用を増強するなど、処方全体の効果を底上げしています。また、苦味のある枳実の風味をマイルドにし、胃への刺激を緩和する働きも持っています。ただし甘草は含有量が多くなると前述の偽アルドステロン症の原因となり得るため、本方を長期に大量服用する場合や他の甘草含有薬と併用する場合には注意が必要です。

生姜(ショウキョウ)

生姜は身体を温め、発汗させつつ胃腸を守る作用を持つ生薬です。新陳代謝を高めて血行を促進し、また抗炎症・鎮痛効果もあることが知られています。排膿散及湯では、生姜が他の生薬の働きを調和し、胃腸の機能を高める目的で配合されています。特に枳実や芍薬による胃腸への負担を軽減し、消化吸収を助ける役割を果たします。また、生姜の持つ発汗・発散作用は、患部にこもった熱や膿を表へと追い出す手助けとなります。少し汗をかかせることで炎症による熱を下げ、桔梗や枳実が膿を排出しやすい状態にします。さらに、生姜自身も殺菌作用や抗炎症作用が報告されており、膿を伴う感染症の治癒を裏側から支えている生薬といえます。

大棗(タイソウ)

大棗はナツメというクロウメモドキ科の果実で、身体を補い、胃腸を和ませる作用を持つ生薬です。甘みがあり、古来より健脾作用(消化機能を助ける)と鎮静作用があるとされています。排膿散及湯では、体力を消耗しがちな化膿症の患者様のエネルギーを補い、処方の緩衝剤として配合されています。大棗の強壮作用によって、炎症と戦う身体を支え、全体のバランスをとることで副作用を出にくくしています。また、一部利尿作用もあり体内の余分な水分をさばく働きが期待できるため、枳実や甘草と協力して患部のむくみを取るのにも役立ちます。生姜と組み合わせた生姜大棗のペアは多くの漢方で処方全体を調和させるコンビネーションであり、本方でも他の生薬の効果を引き出しつつ患者様の体力を支える大切な役割を果たしています。

排膿散及湯にまつわる豆知識

  • 名前の由来:「排膿散及湯」という名前は、直訳すると「膿を排する散剤および湯剤」という意味になります。これは膿を出すための粉薬と煎じ薬というニュアンスで、古くは患部に振りかける散薬(外用薬)と内服の湯薬の両面から膿を治療していたことに由来すると考えられます。また、「散及湯」と両方の剤形を含む名付けは珍しく、それだけ膿を出す効果を強調した処方であることがうかがえます(読みは「ハイノウサンキュウトウ」です)。
  • 歴史:排膿散及湯は中国清代の医学書など外科(げか)領域の古典に収載された処方とされています。昔から、おできや腫れものなど外科的な膿の病変に対する漢方薬として知られていましたが、抗生物質の発達により近代の日本では一時あまり用いられない時期もありました。しかし、近年になって掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)など細菌感染ではないものの膿を伴う難治性皮膚疾患に本方を応用した報告があるなど、改めてその有用性が見直されつつあります。現在でもツムラや小太郎など複数の漢方製薬会社から製剤化され、必要に応じて医療現場で使われています。
  • 処方構成の特徴:排膿散及湯の処方を見ると、桔梗・甘草から成る桔梗湯(ききょうとう)に、枳実・芍薬・生姜・大棗を加えた形になっています。桔梗湯は肺や喉の膿を出す基本方剤ですが、排膿散及湯ではさらに炎症を抑える生薬(芍薬)腫れを散らす生薬(枳実)を加えることで、より広い範囲の化膿症状に対応できるよう工夫されています。また、生姜・大棗の組み合わせにより処方全体の調和を図りつつ、体力の消耗を防ぐ設計になっています。このように、既存の漢方方剤に生薬を加減して応用するのは漢方処方の特徴であり、排膿散及湯もその好例と言えます。
  • 生薬に関する豆知識:桔梗(キキョウ)はその根を生薬として用いますが、原植物のキキョウは秋に紫色の可憐な花を咲かせることで知られ、日本でも古くから親しまれてきた野草です。その花の形が風船に似ていることから英名では「バルーンフラワー」と呼ばれます。一方、大棗(タイソウ)はナツメという果実で、乾燥させたものは甘みがあり食用にもなります。漢方では滋養強壮の生薬として重宝され、スープの具材やお菓子にも利用されてきました。排膿散及湯には、このように身近な植物由来の生薬が含まれており、生姜や大棗のおかげでエキス製剤はほのかに甘辛く、比較的飲みやすい風味になっています。苦味の強い黄連解毒湯などに比べると服用しやすいため、患者様の継続服用の負担が少ない処方と言えるでしょう。

まとめ

排膿散及湯は、患部に膿がたまって赤く腫れ、痛みを伴うような方に適した漢方薬です。体内にこもった熱と膿を押し出し、炎症を鎮めることで、おできや蓄膿症、歯槽膿漏などの腫れ・痛みを改善する効果が期待されます。抗生物質のように直接細菌を殺すわけではありませんが、身体の治癒力を高めて「膿の排出を後押しする」点が特徴です。比較的副作用の少ない処方とされていますが、体質に合わない場合や他の漢方薬・医薬品との併用には注意が必要です。赤みや熱感のない冷えた腫れには効果が出にくいため、専門家による証(しょう)の見立てが重要になります。

当クリニックでは患者様の症状や体質(証)をじっくりと伺い、一人ひとりに合った漢方薬をご提案しています。
証の判断・漢方薬の選択に悩む場合は長崎クリニック浜町漢方外来までぜひご相談ください。

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