小建中湯(ツムラ99番):ショウケンチュウトウの効果、適応症

目次

小建中湯の効果、適応症

小建中湯(しょうけんちゅうとう)は、主にお腹の痛みや体力の低下に対して用いられる漢方薬です。身体を内側から温めて胃腸を補い(「中」を建て直す)、筋肉のこわばりや痛みを和らげる効果があります。特に虚弱体質の方やお子様で、次のような症状・体質に効果が期待できます。

  • 虚弱なお腹の痛み:お腹が冷えて痛みやすく、体力がなく疲れやすい(腹痛は温めると楽になる)
  • 小児の虚弱症状:食が細く風邪をひきやすいお子様で、夜間に腹痛を訴えたり、夜尿症(おねしょ)・夜泣きを繰り返す
  • 慢性胃腸虚弱:胃腸が弱く下痢と便秘を繰り返す、顔色が悪く貧血ぎみで手足がほてるのに末端は冷える

このように、小建中湯は体力が低下し、胃腸の働きが弱っている方のさまざまな不調に用いられる処方です。漢方医学では、このような状態を「虚労(きょろう)」と呼び、慢性的な疲労や栄養不足による症状に対処する薬として古くから知られています。
中国の古典医学書『金匱要略(きんきようりゃく)』では「虚労裏急(りきゅう)」(体の内側が急迫する痛みや虚弱症状)を治す方剤として記載されており、東洋の栄養剤ともいえる存在です。近年でも小児科領域を中心に、症状と体質が合致すれば腹痛や疲労感、夜尿症などの改善に効果が期待できます。

よくある疾患への効果

小児の虚弱体質(腹痛・夜尿症・夜泣き)

小建中湯は、虚弱なお子様の体質改善によく用いられます。お腹が痛くなりやすく夜中に「おへそが痛い」と泣く子、夜尿症(おねしょ)が続いている子、偏食ですぐ風邪をひいてしまう子などが典型的です。小建中湯は甘く飲みやすい処方のため、小児でも比較的嫌がらず服用できます。
胃腸を温めて栄養を補給することで、子どもの腹痛を和らげ、夜間の不安定な自律神経を整えるとされています。「夜泣き」に対して用いることで睡眠の質が改善した例や、おねしょの頻度が減少したケースも報告されています。
ただし、感染症による発熱や急性の腹痛(虫垂炎など疑われる場合)には別の治療が必要であり、小建中湯の適応ではありません。

慢性胃腸炎・過敏性腸症候群

慢性的な胃腸の不調にも、小建中湯が応用されることがあります。機能性ディスペプシア(神経性胃炎)や過敏性腸症候群で、胃もたれや腹部膨満感、下痢と便秘を繰り返すタイプの方に用いられます。これらの方は概して痩せ型で筋肉が少なく、お腹に力が入らず冷えやすいのが特徴です。
小建中湯は胃腸を温めて消化機能を助け、腸の緊張を緩めることで腹痛やお腹の張りを改善する効果が期待できます。実際に、ストレスや疲労で症状が悪化する過敏性腸症候群の患者様に小建中湯を処方し、腹痛や下痢が軽減した例があります。ただし、胃潰瘍など器質的な病変が強い場合や、炎症による激しい腹痛(急性胃腸炎など)には適しませんので、症状に応じて適切な治療法を選択する必要があります。

虚弱による疲労感・動悸

小建中湯は、慢性的な疲労倦怠感や軽い動悸(どうき)など、いわゆる「虚弱体質」に伴う不調にも用いられることがあります。たとえば病後や産後の回復期で、体が極度に弱って疲れやすく、少し動くと息切れしたり心臓がドキドキするような場合です。
小建中湯は全身の気力・体力を補い、血行を促進することでこれらの症状を和らげる狙いがあります。東洋医学では、極度の疲労で発熱する「虚労発熱(きょろうはつねつ)」という現象が知られていますが、小建中湯はこのような疲れからくる発熱にも有効とされています。実際、「子どもが運動会ではしゃぎすぎて夜に熱を出したとき、小建中湯を一服飲ませたら朝には熱が下がった」という昔ながらの経験談もあります。
ただし、高血圧や心臓病など循環器の基礎疾患がある方の場合、むやみに滋養強壮薬を用いるとかえって負担となる場合もあります。服用後に動悸の悪化や息苦しさを感じる場合には、すぐに医師に相談してください。

同様の症状に使われる漢方薬との使い分け

虚弱体質や腹痛の症状には、小建中湯以外にもいくつか漢方薬が用いられます。症状や体質(証)の違いによって処方を選び分けることが大切です。ここでは、小建中湯と比較されやすい処方をいくつかご紹介します。

黄耆建中湯(98)

黄耆建中湯(98)(おうぎけんちゅうとう)は、小建中湯に黄耆(オウギ)という補気薬(体力をさらに補う生薬)を加えた処方です。小建中湯よりも一段と虚弱が強い場合に用いられます。汗をかきやすく風邪をひきやすい、あるいは盗汗(睡眠中の異常な寝汗)が止まらないようなケースでは、小建中湯より黄耆建中湯の方が適しています。
黄耆を加えることで免疫力・滋養強壮効果が増強され、慢性の疲労や術後の衰弱からの回復を促すのに役立ちます。小建中湯では物足りないほど体力が落ちている方や、貧血傾向・皮膚の治癒力低下(床ずれ・術後の傷の治りが遅い 等)を伴う方には黄耆建中湯が検討されます。

大建中湯(100)

大建中湯(100)(だいけんちゅうとう)は、お腹の冷えによる激しい痛みに用いられる処方です。小建中湯が「小さい建中湯」なのに対し、大建中湯は「大きい建中湯」で、より強力にお腹を温める点が特徴です。構成生薬も異なり、山椒(サンショウ)や乾姜(カンキョウ)といった強力な温薬を含みます。
お腹が板のように冷たく張って痛む(冷え性の腹痛が激しい)場合に適し、腸の蠕動運動を活発にして痛みを鎮めます。たとえば術後イレウスによる腹部膨満感や、真冬に冷たいものを摂って起こる差し込むような腹痛には大建中湯が選択されます。一方、小建中湯はそこまで痛みが強くなく、もう少し穏やかな虚弱状態に使われる処方です。強い冷えや痛みには大建中湯、穏やかな冷えと虚弱には小建中湯、と使い分けられます。

桂枝加芍薬湯(60)

桂枝加芍薬湯(60)(けいしかしゃくやくとう)は、胃腸の機能失調による腹痛に用いられる処方です。名前の通り「桂枝湯」に芍薬を増量したもので、小建中湯の原型にあたりますが飴糖は含みません。下痢や便秘を繰り返す過敏性腸症候群や、腹部膨満感・ガス腹などの症状に対して処方されます。
桂枝加芍薬湯は腸の痙攣を鎮めてお通じを整える効果があり、下痢と便秘を交互に起こす「しぶり腹」に昔からの定番薬です。腹痛に対する効果は小建中湯と似ていますが、滋養強壮作用は弱く甘味成分もないため、体力を補うよりも腸の動きを調整することに重きを置いた処方と言えます。小建中湯よりも体力中等度以上の方で、お腹の張りや便通異常が主体の場合に選ばれます。

安中散(5)

安中散(5)(あんちゅうさん)は、みぞおち周辺の胃痛に用いられる処方です。神経性胃炎や慢性胃炎で、胃酸過多や食後の胸やけを伴うような場合によく使われます。ガスやゲップが多く、お腹を触ると力がなくふにゃっとしている人に適しています。安中散は胃を温めつつ、過剰な胃酸を中和して痛みを和らげる処方です。
牡蛎(ボレイ)やウイキョウなど胃酸を抑え胃粘膜を保護する生薬が含まれており、ストレス性の胃痛に効果的です。小建中湯と同じく胃腸を温める点は共通していますが、安中散の方が胃酸過多や胸やけを伴う胃痛向けであり、体力の増強作用は期待できません。
逆に、小建中湯は胃酸過多には直接効果を持ちませんが、全身の虚弱を改善して結果的に胃腸を元気にする処方です。胃の痛みにどの要素(冷え・酸・虚弱)が強いかによって、これらの薬が使い分けられます。

副作用や証が合わない場合の症状

小建中湯は比較的マイルドな処方ですが、体質に合わない場合や長期間・大量に服用した場合、副作用が現れる可能性があります。

  • 消化器症状:食欲不振、胃もたれ、腹部の膨満感、下痢など。甘味の多い処方のため、人によっては胃腸に負担がかかり軟便傾向になることがあります。服用中に強い胃の不快感や下痢が続く場合は中止し、医師に相談してください。
  • 皮膚症状:発疹、かゆみ、蕁麻疹(じんましん)などのアレルギー反応がまれに起こることがあります。服用後に皮膚に異常を感じた際も、早めに医療機関へご相談ください。
  • 重篤な副作用:小建中湯には甘草(カンゾウ)が含まれます。長期大量服用や他の甘草含有製品との併用により、低カリウム血症に伴う筋力低下や高血圧(偽アルドステロン症)を引き起こすおそれがあります。むくみが強く出たり、脱力感や血圧上昇が見られた場合は、すみやかに専門医に相談してください。

また体質(証)が合わない場合、十分な効果が得られないばかりか症状が悪化することがあります。例えば熱症状が強い実証の方が小建中湯を服用すると、胃もたれやほてり、口内炎・のぼせなどが現れることがあります。小建中湯はあくまで「虚証」で冷えを伴う方向けの補剤であり、体力が充実している人や炎症・熱感が顕著な人には適しません。高熱を伴う急性疾患や激しい炎症がある場合には、他の処置や漢方薬が検討されます。

併用禁忌・併用注意な薬剤

小建中湯には麻黄や附子のような刺激の強い生薬は含まれておらず、絶対的な併用禁忌とされる薬剤は比較的少ないとされています。ただし、以下のような場合には併用に注意が必要です。

  • 利尿薬や副腎皮質ステロイド剤との併用:小建中湯に含まれる甘草の作用により、利尿薬(例:フロセミドなど)やステロイド剤と一緒に服用すると体内のカリウムが失われやすくなる可能性があります。低カリウム血症による筋力低下や不整脈を招かないよう、これらを服用中の方は医師に相談の上で使用してください。
  • 降圧薬や強心薬との併用:小建中湯の服用によって体調が改善し血圧や脈拍に変化が現れる場合があります。高血圧の治療薬や心不全の薬(強心薬)をご使用中の方は、漢方服用開始後の体調変化に注意し、必要に応じて主治医に経過を報告してください。特にジギタリス製剤を服用中の場合、低カリウム状態で作用が増強されるおそれがあるため十分な注意が必要です。
  • 抗凝血薬との併用:小建中湯自体には出血傾向を直接高める生薬は多くありません。しかし一般論として、漢方薬中の生薬成分がワルファリンなど抗凝血薬の効果に影響を与える可能性が指摘されています。抗凝血薬を服用中の方が小建中湯を併用する際は、念のため定期的に血液検査を受けるなど慎重な経過観察を行ってください。
  • 他の漢方薬やサプリメントとの併用:小建中湯と作用が似た生薬(例えば甘草や桂皮など)を含む漢方薬を自己判断で併用すると、生薬成分が重複して副作用リスクが高まる可能性があります。また健康食品やサプリメント類との相互作用も考えられるため、現在服用中のものがあれば必ず医師・薬剤師に伝えてください。
  • 糖尿病治療薬との併用:小建中湯に含まれる飴糖(麦芽糖)は糖質です。エキス製剤では含有量は多くありませんが、長期連用や多量服用により血糖値へ影響を及ぼす可能性もあります。インスリンや経口血糖降下薬を使用中の方は、血糖変動に注意し、必要に応じて医師に相談してください。

含まれている生薬の組み合わせ、なぜその生薬が選ばれているか

小建中湯は、6種類の生薬を組み合わせて作られています。基本的な処方構成は「桂枝湯(けいしとう)」をベースに芍薬を倍量とし、さらに飴糖を加えたものです。具体的には「桂枝(ケイシ)」「芍薬(シャクヤク)」「甘草(カンゾウ)」「生姜(ショウキョウ)」「大棗(タイソウ)」「飴糖(イトウ)」から成り、それぞれに重要な役割があります。

桂枝(けいし)

桂枝はシナモンの小枝で、身体を温めて血行を促進し、痛みを和らげる作用を持つ生薬です。発汗を促しつつ体表と内部のバランスを整える働きがあり、古くから冷えによる不調に用いられてきました。小建中湯では、桂枝が冷えで滞った「気血」を巡らせ、腹部の冷え痛を改善する中心的な役割を担います。
桂枝が胃腸の陽気を温めることで、虚弱で冷えがちな胃腸の働きを後押しし、腹痛や胃部不快感を軽減します。また、桂枝には上逆した気を下げて動悸(どうき)を鎮める効果も期待できるため、虚弱による心悸亢進の緩和にも寄与します。

芍薬(しゃくやく)

芍薬はシャクヤクの根で、筋肉のけいれんを緩めて痛みを止める作用があります。とくにお腹の痛み(腹痛)やこむら返りなど、筋肉の急激な収縮による痛みを和らげる生薬として有名です。小建中湯では芍薬が倍量使用されており、腹部の激しい痛みや差し込むような疝痛(せんつう)を鎮める主役となっています。
芍薬は血を補い、肝の機能を助けて緊張をほぐす作用もあるため、痛みによるイライラ感の軽減にもつながります。また、次に述べる甘草との組み合わせ(芍薬甘草湯)は強力な鎮痙作用を発揮し、胃腸のけいれん性の痛みを取るのに効果的です。芍薬は小建中湯全体の鎮痛効果の要(かなめ)となる生薬です。

甘草(かんぞう)

甘草はカンゾウの根で、生薬同士の調和を図り、筋肉の緊張を緩める作用を持ちます。甘味を帯びた生薬で胃を保護しつつ、消炎・鎮痛作用も持ち合わせる万能薬です。小建中湯では、複数の生薬のクセをまろやかにまとめ、副作用を抑える潤滑油のような役割があります。例えば生姜の刺激を和らげ、胃腸への負担を軽減します。
また芍薬とペアを組むことで顕著な鎮痙(ちんけい)作用を発揮し、過度な腹部のこわばりや疼痛を和らげるのに貢献します。さらに、甘草自身にも気を補い脾胃(消化機能)を支える作用があり、虚弱な体を優しく補強します。ただし含有量が多くなると前述の偽アルドステロン症の原因となりうるため、他の甘草含有薬との併用には注意が必要です。

生姜(しょうきょう)

生姜はショウガの根茎を乾燥させたもので、身体を温め胃腸を守りつつ発汗させる作用を持ちます。小建中湯では、生姜が胃を温めて消化を助け、他の生薬の吸収を高める目的で配合されています。とくに飴糖のような甘味成分を含む処方では、生姜が胃腸の働きを促進することで、糖分の消化吸収をスムーズにします。
さらに、生姜自体にも血行促進と鎮痛効果があり、冷えを伴う腹痛において痛みを和らげる一助となります。古典には「生姜は諸薬を胃に納める」と記されており、生姜の存在によって小建中湯の生薬たちが胃にもたれず効果的に働くよう調整されています。

大棗(たいそう)

大棗はナツメの果実で、脾胃を補い、血を養い、神経を安定させる作用を持つ生薬です。甘味があり、体力の低下した人の食欲増進や栄養補給に用いられてきました。小建中湯では、大棗が胃腸の働きを底上げし、全身の栄養状態を改善する役割を担います。
桂枝湯系列の処方では、生姜と大棗を併用することで消化機能を整える相乗効果が知られており、小建中湯でもこのコンビが処方をマイルドにまとめています。さらに、大棗には精神を安定させる作用もあるため、不眠や不安感を抱える虚弱者の神経を落ち着かせる助けにもなります。お子様の夜泣きなどに小建中湯が効く背景には、大棗の持つ緩和作用も一役買っていると言えるでしょう。

膠飴(こうい)

飴糖はいわゆる水あめに近い物質で、米や麦芽から作られる栄養価の高い糖質です。小建中湯において飴糖は、エネルギー源の補給と急迫した痛みの緩和という二つの役割を担っています。東洋医学では「甘味は緩急(かんきゅう)を調和する」と言い、甘い味は筋肉のこわばりや痛みなどの緊張状態を緩めると考えられます。
実際、飴糖の追加によって桂枝加芍薬湯が小建中湯に変化すると、虚弱者への滋養強壮効果と鎮痛効果が飛躍的に高まります。飴糖は直接身体を温めるわけではありませんが、胃腸に優しく吸収されて気力体力の回復を助け、腹部の痛みを和らげます。また、処方全体に甘くまろやかな風味を与えるため、小建中湯が子供でも飲みやすい漢方薬になっている一因でもあります。飴糖はまさに小建中湯の象徴的な生薬であり、「美味しくて効く」処方を実現している鍵と言えますが、膠飴を構成生薬に含めないものもあります。

小建中湯にまつわる豆知識

  • 名前の由来:「小建中湯」の「建中」とは文字通り**「中(=消化器系)を建て直す」、すなわち胃腸を強化するという意味です。同じく「建中」の名を持つ処方に、より強力な大建中湯**があります。小建中湯が比較的穏やかな作用で体質を補うのに対し、大建中湯は激しい腹痛や冷えに対処する処方です。症状の程度によって「小」と「大」を使い分ける発想は、漢方独特のネーミングと言えるでしょう。
  • 歴史:小建中湯は、約1800年前の中国・漢代の医書『傷寒論』および『金匱要略』にその処方が記載されています。著者である張仲景(ちょうちゅうけい)は、小建中湯を虚労(慢性的な虚弱状態)による諸症状の治療薬として紹介しました。その後、日本でも江戸時代から明治にかけて多くの漢方家によって用いられ、**「小児の御薬」**として重宝された歴史があります。現代でもエキス製剤(顆粒薬)として手軽に使える形で市販されており、古くから伝わる滋養強壮剤として広く認知されています。
  • 使用エピソード:前述したように、子どもの遊び疲れによる発熱に小建中湯を用いた興味深い逸話があります。遠足や運動会で子供が一日中走り回ったあと、夜になって発熱した場合に小建中湯を飲ませると翌朝にはケロッと熱が引いていた――という経験談が漢方臨床家の間で語り継がれています。これは、小建中湯が単なる解熱剤ではなく、疲労で乱れた自律神経や失われたエネルギーを補って体調を正常化させた結果と考えられます。現代医学的に言えば、栄養補給とリラクゼーション効果で疲労回復を促進したとも言えるでしょう。このように、小建中湯は「疲れからくる不調」を整える処方としてエピソード的にも語られています。
  • 甘くて飲みやすい漢方薬:漢方薬と聞くと苦いイメージがありますが、小建中湯は甘味が強く飲みやすい処方です。含まれる飴糖のおかげでシロップのような甘さがあり、お子様でも嫌がらずに服用できることが多いです。この甘さ自体にも意味があり、先述の通り甘味は痛みや緊張を和らげる作用を持ちます。実際、芍薬甘草湯という甘い漢方は筋肉のけいれん(こむら返り)の特効薬として有名です。小建中湯は、そうした甘味による生理的効果と服用のしやすさを両立したユニークな処方と言えます。「薬は苦いもの」という常識を覆す一例として、患者様にも驚かれることがある漢方薬です。

まとめ

小建中湯は、虚弱体質で冷えを伴う腹痛や疲労感、夜尿症などに適した漢方薬です。胃腸を温めて気血を補い、筋肉の痙攣を緩めることで、慢性的なお腹の痛みや全身倦怠感を改善し、子どもの夜尿症や虚弱体質の諸症状にも効果が期待されます。比較的副作用の少ない処方とされていますが、体質に合わない場合や他の医薬品との併用時には注意が必要です。実証(体力が充実している場合)や炎症の強い場合には効果が出にくいため、専門家による証の見立てが重要になります。

当クリニックでは患者様の症状や体質(証)をじっくりと伺い、一人ひとりに合った漢方薬をご提案しています。
証の判断・漢方薬の選択に悩む場合は長崎クリニック浜町漢方外来までぜひご相談ください。

  • URLをコピーしました!
目次