安中散(ツムラ5番):アンチュウサンの効果、適応症

<h2>安中散の効果・適応症</h2>

安中散は胃下垂傾向のあるやせ型で比較的体力(胃腸)が低下した人の次の症状に適しています。

げっぷや食欲不振、吐き気などを伴う神経性胃炎、慢性胃炎、胃アトニー

成人では、1日に7.5gを2~3回に分割して、食前または食間(食後2時間)に水、または白湯で飲むか、またはお湯に溶かして飲みます。

<h3>神経性胃炎・慢性胃炎・胃アトニーへの安中散の効果</h3>

安中散は体力がなく冷えがあるような人の胃痛・胸やけ・嘔吐に用いる処方です。ストレス性の胃部症状、特に胃痛に頻用されます。最近よく話題になっている機能性胃腸症に使われる処方の一つでもあります。

慢性的に吐き気や嘔吐、胸やけ、胃痛があったり、ストレス性の胃痛がある場合に効果が期待できます。
甘味好き冷え性がキーワードになります。構成生薬のうち5種はお腹を温める生薬になります。

他剤との使い分けでは、六君子湯(43)は安中散より少し体力があるような人で冷えはさほどでなく、疲れやすい、元気がない、食欲不振などの時に用います。
同じストレス性の胃腸障害でも、体力が中程度以上で、胃部のつかえ感、下痢時のゴロゴロ感があり、時に不安や不眠などの精神神経症状を伴う場合には半夏瀉心湯(14)が適しています。

体力がより低下している場合には人参湯(31)が適しています。
体力が中程度で消化不良で胃が張るタイプには平胃散(79)が、体力が比較的あり、げっぷが見られる場合には茯苓飲(69)が適しています。

体力が中程度で症状が似ているものの、心窩部の圧痛や神経質で手足が冷えやすい人の慢性胃炎には四逆散(35)が適しています。

<h2> 安中散の副作用・証が合わない場合の症状</h2>

副作用

安中散には甘草が含まれており、稀な副作用として偽アルドステロン症を起こす可能性があります。

偽アルドステロン症の症状としては、低カリウム血症をおこし、血圧増加、むくみ、体重増加などが表れることがあります。
さらに低カリウム血症の結果として、ミオパチーを起こす可能性があります。症状としては、脱力感、手足のけいれんなどがあります。

桂皮が含まれているため、発疹、発赤、掻痒などの過敏症状があらわれるおそれがあります。

証に合わない場合

安中散は温める作用のある薬なので、胃に熱を持っている場合は合いません。例えば急性の胃炎、急性の胃潰瘍・十二指腸潰瘍などの炎症の強い熱性の症状が不適になります。陳旧性の胃・十二指腸潰瘍には安中散を用いられることがあります。

それ以外であれば、虚証(体力気力胃腸の力が低下している)の薬であるため、証に合わないということはありません。胃腸の強さの有無が分からない場合、虚証の薬のほうが安全と言われているからです。

<h2> 安中散の生薬の組み合わせ、なぜその生薬が選ばれているか</h2>

桂皮(ケイヒ)、延胡索(エンゴサク)、牡蛎(ボレイ)、茴香(ウイキョウ)、甘草(カンゾウ)、縮砂(シュクシャ)、良姜(リョウキョウ)の7種で構成されています。

牡蛎と甘草以外は胃を温める働きを示します。桂枝、良姜、縮砂、茴香は芳香性健胃に、延胡索は鎮痛に、牡蛎は胃酸を中和し鎮静に働く生薬です。また、桂枝、良姜、縮砂、茴香、延胡索は気剤と言われている生薬で、精神神経性の消化器疾患にも効果が期待できる生薬構成となっています。

良姜は生姜と類似の作用があり、より香りや味が良いものとのことです。生姜より鎮痛効果が高いと言われています。

<h2> 安中散のまとめ</h2>

安中散は慢性胃炎や神経性胃炎に用いられることが多い方剤になります。
大正製薬さまや太田胃散さまなど販売されている胃腸薬も安中散と他の漢方や生薬との組み合わせであり、一般医薬品として販売もされているほど多く使われています。

また、効能効果では言われていませんが月経痛にも効果があると言われており、当帰芍薬散(23)で胃痛が起こるような場合に有効という報告があります。

胃痛や生理痛など、腹痛一般に効く使いやすい薬と覚えておくとよいです。
ただし、気虚の症状(食思不振、元気がない、疲れやすいなど)を伴う場合は人参の入った処方を加える必要があります。

証の判断・漢方薬の選択に悩む場合は長崎クリニック浜町漢方外来までぜひご相談ください。

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