<h2>葛根湯の効果・適応症</h2>
葛根湯は体力中程度以上で胃腸に異常がない人の次の症状に適しています。
寒気、発熱、頭痛、肩こりを伴う風邪の初期(汗をかいていないもの)、鼻かぜ、鼻炎、頭痛、肩こり、手足の痛み、筋肉痛、じんましん
成人では、1日に7.5gを2~3回に分割して、食前または食間(食後2時間)に水、または白湯でのむか、またはお湯に溶かして飲みます。
<h3>風邪の初期症状への葛根湯の効果</h3>
風邪の引きはじめの、ゾクゾクとした寒気、発熱、首の後ろ側や肩のこわばり、頭痛があって、自然発汗がない場合に飲むのが効果的です。痛みや凝りをやわらげ、発汗解熱作用があり、鼻水、咳に作用します。
生姜で体温を上昇させる力を補いつつ、麻黄で身体が体温を上げようとブルブル震えるのを抑えるような効果があるため、体力を維持しながら風邪のウイルスと戦うことができるのです。
風邪の初期に体力が充分保つことで「葛根湯を内服したら風邪がすぐ治ってしまった」ような効果が出る場合があるのですね。
発熱や頭痛のほか関節痛がある体力がある(胃腸が丈夫)風邪の引きはじめには麻黄湯が、寒気が強くて手足が痛むような体力もない(胃腸が弱い)風邪の引きはじめには麻黄附子細辛湯(127)が適していると言えます。
高熱がある場合は、発汗作用の強い麻黄の含まれる方剤が使われます。
一方、鼻風邪には中程度の体力の人に用いる小青竜湯や、葛根湯から葛根と麻黄を抜いた比較的胃にやさしい桂枝湯(45)があります。
胃腸が虚弱で冷え性の上記の漢方で胃痛を起こすような人の症状の軽い風邪の初期には、香蘇散(70)が適しています。
漢方医は様々な病態に対する色々な選択肢を考慮した上で、処方する漢方薬を選択しているのです。
<h3>肩こりや筋肉痛、じんましんなどへの葛根湯の効果</h3>
風邪のときに見られる主な症状に対する効果に加え、炎症反応を抑える働きがあり、抗アレルギー作用も確認されています。炎症が原因で起こる痛みや腫れ、赤み、じんましんの痒み、鼻炎に効果があります。
これらの効果は甘草や大棗にはアレルギーやかゆみを抑える働きがあるからと考えられています。炎症反応によっておこる部分的な熱感は桂皮や麻黄によって、痛みは葛根をはじめとする複数の生薬で発散されていると推測されています。
<h2> 葛根湯の副作用・証が合わない場合の症状</h2>
葛根湯には甘草が含まれており、稀な副作用として偽アルドステロン症を起こす可能性があります。
偽アルドステロン症の症状としては、低カリウム血症をおこし、血圧増加、むくみ、体重増加などが表れることがあります。
さらに低カリウム血症の結果として、ミオパチーを起こす可能性があります。症状としては、脱力感、手足のけいれんなどがあります。
その他、肝機能障害や横断、過敏症、胃腸障害、発汗過多、不眠、動悸などが起こる可能性があります。
証(症状や身体所見からみた現在の健康状態・病態)に合わない場合
病後など体力が衰弱している時には副作用が表れやすくなる可能性があります。
胃腸が虚弱な人の場合、麻黄が含まれているため食欲不振や胃部不快感、吐き気などを起こす場合があります。
すでに汗を多くかいている場合は、発汗過多、全身脱力感などが起こる可能性があります。
<h2> 葛根湯の生薬の組み合わせ、なぜその生薬が選ばれているか</h2>
葛根(カッコン)、桂皮(ケイヒ)、大棗(タイソウ)、芍薬(シャクヤク)、麻黄(マオウ)、生姜(ショウキョウ)、甘草(カンゾウ)の7種で構成され、葛根が主薬として構成されるため、葛根湯といわれています。
主薬の葛根によって、体表部の熱を発散させて筋肉の凝りや痛みを和らげます。麻黄には強力な発汗解熱作用があり、桂皮にも身体を温め発汗作用がありますが、芍薬がその発汗作用をにブレーキをかけ適正に保つ働きをします。生姜も身体の深部から体を温める働きがあります。甘草を含む他の3種は、胃腸を保護しながら、抵抗力や治癒力の維持などを図るように働きます。
<h2> 葛根湯のまとめ</h2>
葛根湯は、ゾクゾクくる寒気、首の凝りや熱感があっても発汗がない風邪の引きはじめに、気づいたら早めに飲み始めると良いでしょう。葛根湯を慢性の肩こりに使用することもあります。
風邪の時には胃腸が弱ってきてる場合が多いので、麻黄による胃腸への負担を考え、消化の良いものを食べ、発汗が促されるので水分の補給もしましょう。風邪の場合、初期の急性期にのみ使用します。少し長引く場合には、他の薬に変える必要があることを覚えておきましょう。
いずれにしても胃腸が弱っている場合だと適さない場合があるため、その点はまず注意が必要です。
証の判断・漢方薬の選択に悩む場合は長崎クリニック浜町漢方外来までぜひご相談ください。