<h2>桂枝加朮附湯の効果・適応症</h2>
関節痛、神経痛
成人では、1日に7.5gを2~3回に分割して、食前または食間(食後2時間)に水、または白湯でのむか、またはお湯に溶かして飲みます。
<h3>関節痛や神経痛への桂枝加朮附湯の効果</h3>
桂枝加朮附湯は冷え症で比較的体力が低下した人の、四肢関節の痛みや腫れ、筋肉痛、四肢の運動障害などに用いられます。
関節痛があって寒冷によって増悪する場合や、微熱や盗汗、朝の手のこわばり、尿量減少などを訴える場合は桂枝加朮附湯の適応です。
他剤との使い分けでは、関節痛に関しては越婢加朮湯(28)では一般症状が共通しますが、越婢加朮湯(28)は関節炎において局所の炎症強い状態に使用するのに対し、桂枝加朮附湯は体力が虚弱な人の遷延性の炎症に使用します。
薏苡仁湯(52)は慢性関節炎、慢性関節リウマチで桂枝加朮附湯と鑑別されます。薏苡仁湯(52)は鎮痛効果が高いですが、胃腸虚弱者や心疾患・腎疾患患者では要注意となります。桂枝加朮附湯は胃腸虚弱者に適しています。
防已黄耆湯(20)では虚弱者の膝関節症で鑑別が必要になります。
肥満して浮腫み傾向にあり、局所の熱感がない場合は防已黄耆湯(20)が、痩せて冷えが強い場合は桂枝加朮附湯が適しています。
大防風湯(97)は使用目標が慢性関節リウマチや慢性関節炎であり桂枝加朮附湯と似ていますが、皮膚が乾燥して貧血傾向で症状が慢性経過してる場合は大防風湯(97)が適しています。
大防風湯(97)で胃腸障害が出てしまう場合は桂枝加朮附湯が適しています。
神経痛に対しては、麻黄附子細辛湯(127)は使用目標が三叉神経痛、帯状疱疹後神経痛で共通しますが、麻黄附子細辛湯(127)は胃腸が丈夫なものに適しています。
五苓散(17)は保険適応病名ではないものの三叉神経痛に効果がある点で共通しますが、体質がやや虚弱で冷えがなくて浮腫む傾向がある人に適しています。
疎経活血湯(53)は坐骨神経痛で共通しますが、胃腸が丈夫な人に適しています。
八味地黄丸(7)は坐骨神経痛で共通しますが、主に高齢者で腰痛や排尿障害を伴う場合に適しています。
<h2> 桂枝加朮附湯の副作用・証が合わない場合の症状</h2>
副作用
桂枝加朮附湯には甘草が含まれており、稀な副作用として偽アルドステロン症を起こす可能性があります。
偽アルドステロン症の症状としては、低カリウム血症をおこし、血圧増加、むくみ、体重増加などが表れることがあります。
さらに低カリウム血症の結果として、ミオパチーを起こす可能性があります。症状としては、脱力感、手足のけいれんなどがあります。
桂枝加朮附湯は、過敏症が起こる可能性があります。発疹、発赤、そう痒などがあらわれた場合には、使用を中止してください。また肝機能を表す血液検査値の異常が見られることがあるため、その場合は使用を中止してください。
妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、投与しないことが望ましいです。含まれる修治ブシ末の副作用があらわれやすくなります。
証に合わない場合
桂枝加朮附湯は比較的体力が低下した人に用いられるため、体力の充実している患者では副作用が現れやすくなり、その症状が増強される恐れがあります。
暑がりでのぼせが強く、赤ら顔の患者では、心悸亢進、のぼせ、舌のしびれ、悪心等があらわれる恐れがあります。
他の漢方製剤を併用する場合は、含有生薬の重複に注意が必要です。
<h2> 桂枝加朮附湯の生薬の組み合わせ、なぜその生薬が選ばれているか</h2>
桂皮(ケイヒ)、芍薬(シャクヤク)、蒼朮(ソウジュツ)、大棗(タイソウ)、甘草(カンゾウ)、生姜(ショウキョウ)、附子(修治ブシ末)の7種で構成されており、胃腸虚弱で体力乏しい冷え症の者の関節痛、神経痛、しびれ感などに用いられます。やせ型で内臓下垂があり、胃がぽちゃぽちゃした感じがある人に適しています。
附子は強心、血管拡張、鎮痛、抗炎症などの作用があるとされ、蒼朮は発汗促進、健胃整腸、鎮痛剤として使用されます。
桂皮、附子、朮、甘草という組み合わせに鎮痛効果があると考えられています。鎮痛効果は緩徐ですが、継続的に使用することで徐々に痛みが軽減していきます。
<h2> 桂枝加朮附湯のまとめ</h2>
桂枝加朮附湯は、体力が低下した人の関節痛や神経痛に緩やかに効果を発揮すると言われています。
胃腸が弱い人に使用ができるので他の漢方で胃腸への負担で使用を断念する場合でも使用しやすいと考えられます。
証の判断・漢方薬の選択に悩む場合は長崎クリニック浜町漢方外来までぜひご相談ください。