半夏瀉心湯(ツムラ14番):ハンゲシャシントウの効果、適応症

<h2>禁忌</h2>

次の患者には投与しないこと

1.アルドステロン症の患者

2.ミオパチーのある患者

3.低カリウム血症のある患者

(1~3:これらの疾患及び症状が悪化するおそれがある)

<h2>半夏瀉心湯の効果・適応症</h2>

半夏瀉心湯はみぞおちがつかえ、ときに悪心、嘔吐があり食欲不振で腹が鳴って軟便または下痢の傾向があるものの次の諸症に適しています。

急・慢性胃腸カタル、醱酵性下痢、消化不良、胃下垂、神経性胃炎、胃弱、二日酔、げっぷ、胸やけ、口内炎、神経症

成人では1日に7.5gを2~3回に分割して、食前または食間(食後2時間)に水、または白湯でのむか、またはお湯に溶かして飲みます。

<h3>口内炎・胃腸疾患等への半夏瀉心湯の効果</h3>

半夏瀉心湯は、体力が中程度の心窩部の膨満感、抵抗、圧痛を目標にします。食欲不振、悪心・嘔吐、胸やけ、下痢、軽度の不安・不眠などの精神神経症状を伴う場合に用いられます。

半夏瀉心湯はがん化学療法の副作用予防にも用いられ、塩酸イリノテカンの効果を下げることなく副作用の下痢を予防することが分かっています。イリノテカンでは早発性の下痢と遅発性の下痢の2種類の下痢が引き起こされますが、半夏瀉心湯は両者に効果を示すため下痢に対する強い効果が認められているのです。
黄芩、甘草に含まれる成分が腸内細菌のβ-グルクロニダーゼを阻害して効果を下げることなく下痢を予防すると言われています。

口内炎に対しても強い鎮痛作用が確認されています。半夏瀉心湯中に含まれる黄連の殺菌作用と消炎作用により鎮痛の効果があると考えられており、これは内服に限らず半夏瀉心湯を溶かした水での含嗽(うがい)や直接塗布でも効果があります。

類似処方との使い分けとしては、体力が中程度以上に用いるのが半夏瀉心湯ですが、体力がやや低下している場合は人参湯(31)を用います。半夏瀉心湯が効果的な下痢は、消化不良を起こして、放屁とともに下痢便が出るような感じに対し、人参湯は大体が便臭もほとんどない水様性の下痢で、四肢冷感、全身倦怠感を伴う場合に有効です。

半夏瀉心湯と同じように黄芩と黄連を含む黄連解毒湯(15)は、比較的体力がある、のぼせがあり、不安や不眠などの精神神経症状が顕著な場合に有効です。

六君子湯(43)は、食欲不振や悪心などの症状が似ているものの、胃のポチャポチャ音が認められるような胃腸虚弱で体力が低下した四肢が冷えて全身倦怠感があるタイプに有効です。
症状が似ているものの水様性の下痢が顕著で体力が中程度~やや低下したタイプには胃苓湯(115)が適しています。

<h2> 半夏瀉心湯の副作用・証が合わない場合の症状</h2>

副作用

半夏瀉心湯には黄芩が含まれているため、ごく稀に間質性肺炎が生じる可能性があります。

その初期症状である発熱、咳嗽、呼吸困難、肺音の異常(捻髪音)等があらわれた場合には、本剤の投与を中止し、速やかに胸部X線等の検査を実施するとともに副腎皮質ホルモン剤の投与等の適切な処置を行うこと、とあります。

この初期症状を感じるときには速やかに半夏瀉心湯の服用を中止し、ただちに医師へ連絡するということを覚えている必要があります。

半夏瀉心湯には甘草が含まれており、稀な副作用として偽アルドステロン症を起こす可能性があります。

偽アルドステロン症の症状としては、低カリウム血症をおこし、血圧増加、むくみ、体重増加などが表れることがあります。
さらに低カリウム血症の結果として、ミオパチーを起こす可能性があります。症状としては、脱力感、手足のけいれんなどがあります。

肝機能障害や黄疸が現れることがあります。その他、過敏症が起こる可能性があります。

証に合わない場合

体力が中程度に対して用いられます。経過を十分に観察し、症状・所見の改善が認められない場合は継続投与を避ける必要があります。

甘草が含まれているため血清カリウム値や血圧値等に十分留意し、異常が認められた場合は投与の中止が必要になります。

他の漢方製剤を併用する場合は、含有生薬の重複に注意が必要です。

<h2> 半夏瀉心湯の生薬の組み合わせ、なぜその生薬が選ばれているか</h2>

半夏(ハンゲ)、黄芩(オウゴン)、甘草(カンゾウ)、大棗(タイソウ)、人参(ニンジン)、黄連(オウレン)、乾姜(カンキョウ)の7種で構成されており、急性や慢性の胃腸炎、消化不良、下痢に広く使われています。

構成生薬のうち、乾姜、大棗、人参、半夏は体を温める作用があり、黄連と黄芩は冷やす効果が強い生薬です。半夏はまた、胃の中にたまったものを腸のほうに排出する力を高めてくれ、甘草が生薬の働きを一つにまとめると言われています。結果として胃排出促進作用、制吐作用、止瀉作用などが認められています。

<h2> 半夏瀉心湯のまとめ</h2>

半夏瀉心湯は、抗がん剤(イリノテカン)の下痢の副作用予防に効果があると言われている薬剤で、よく使われるようになってきたようです。半夏瀉心湯は胃腸トラブルによく用いられます。
市販で用いる場合は、もともと胃腸が弱い方で食欲がない方は六君子湯(43)、ストレスが胃にくるタイプの神経性胃炎・胸やけには半夏瀉心湯、急性の胃腸炎や冷え腹で水様性の下痢が強い場合は胃苓湯(115)と覚えておくといいでしょう。

証の判断・漢方薬の選択に悩む場合は長崎クリニック浜町漢方外来までぜひご相談ください。

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