八味地黄丸(ツムラ7番):はちみじおうがんの効果、適応症

<h2>八味地黄丸の効果・適応症</h2>

八味地黄丸は、疲労、倦怠感著しく、尿利減少または頻数、口渇し、手足に交互的に冷感と熱感のあるひとの次の症状に適しています。

腎炎、糖尿病、陰萎、坐骨神経痛、腰痛、脚気、膀胱カタル、前立腺肥大、高血圧。

成人では1日に7.5gを2~3回に分割して、食前または食間(食後2時間)に水、または白湯でのむか、またはお湯に溶かして飲みます。

<h3>坐骨神経痛、腰痛、糖尿病等への八味地黄丸の効果</h3>

中年以降の老齢者によく使われます。易疲労感や口の渇きがある人の腰部や下肢の脱力感、冷え、痛み、糖尿病の神経障害に対して効果があります。冷えに頻尿が伴う場合は奏功しやすいと言われています。

体力はやや虚弱前後~中程度が適しています。体力が充実している場合には適しません。

血管拡張に伴う血流の改善、体温上昇作用により冷えを改善することで痛みやしびれを改善していきます。

他剤との使い分けとして、八味地黄丸は高齢者の冷えが誘発している慢性化した腰痛に用います。腰から下が水に浸かっているような冷えを訴えるような慢性腰痛には、苓姜朮甘湯(118)が適しています。

使用目標が似ているものの四肢冷感が顕著に見られない場合には六味丸(87)が使用され、小児にもよく用いられます。

元々冷え性で足先が冷え、冬には凍傷になるような患者の慢性腰痛には当帰四逆加呉茱萸生姜湯(38)が適しています。

胃腸が弱い(虚証)患者で、上記の漢方が使いにくい場合は桂枝加朮附湯(18)を用います。

冷えに加えてのぼせも伴う場合は、五積散(63)が適しています。

下肢や膝に症状が及ぶ場合は、八味地黄丸に牛膝と車前子の2生薬を加えた牛車腎気丸(107)(別名: 牛車八味丸)が適しています。

<h3>腎炎、前立腺肥大、膀胱炎、高血圧などへの八味地黄丸の効果</h3>

中年以降の老齢者によく使われます。易疲労感や口の渇きを伴うような人で尿回数が少ない、または多い場合でも使うことができます。

八味地黄丸を前立腺肥大に用いる際に、夜間多尿であれば寝る前に一日量の上限の1/3位を飲むことでよい結果を得られることがあります。

体力は、やや虚弱前後~中程度が適しています。体力が充実している場合には適しません。

血管拡張に伴う血流の改善、降圧効果、腎機能改善作用を示す生薬が配合されているため、高血圧や、膀胱炎、前立腺肥大、腎炎などに用いられます。

他剤との使い分けとして、八味地黄丸は冷えを伴う高齢者の膀胱炎や尿道炎に用いるのに対し、排尿痛や時に肉眼的な血尿が伴うような場合は猪苓湯(49)を用います。排尿痛が顕著な体力が比較的ある人には竜胆瀉肝湯(76)が用いられます。

症状が似ているものの、慢性に経過する泌尿器科疾患に伴う頻尿、排尿痛、残尿感がある場合には五淋散(56)が用いられます。

高血圧に用いる場合は足が冷えて手は冷えまたはほてりを伴い、めまいがあるなど軽度の高血圧に用いられます。
筋肉質でがっちりした体型の高血圧症には、大柴胡湯(8)が適しています。
めまい、易疲労感を訴える高血圧症で、顔色が悪く手足が冷える場合には、真武湯(30)を用います。

<h2> 八味地黄丸の副作用・証が合わない場合の症状</h2>

副作用

八味地黄丸は肝機能障害が現れることがあります。また、食欲不振や胃部不快感、食欲不振、悪心、嘔吐、下痢、便秘などが表れることがあります。また、過敏症の他、附子が含まれているため、のぼせ、心悸亢進、舌のしびれなどが起こる可能性があります。

八味地黄丸に含まれる牡丹皮により早流産の危険があるため、妊婦・妊娠可能性のある婦人には投与しないことが望ましいとされています。附子の副作用も出やすくなるため、やはり妊婦・妊娠可能性のある婦人に投与すべきではありません。

証に合わない場合

比較的体力が中~弱い人に適している方剤になるため、体力が充実している患者では副作用が表れやすくなり、その症状が増強する可能性があります。

附子が含まれているため、暑がりでのぼせが強く、赤ら顔の患者では、心悸亢進やのぼせ、舌のしびれ、悪心などが起こることがあります。

地黄が含まれるため、食欲不振や悪心嘔吐のある患者ではこれらの症状が悪化する可能性があります。

胃の調子が低下している人や小児に使う場合には、六味丸(87)を用いるほうが良いでしょう。

<h2> 八味地黄丸の生薬の組み合わせ、なぜその生薬が選ばれているか</h2>

八味地黄丸は、地黄(ジオウ)、山茱萸(サンシュユ)、山薬(サンヤク)、沢瀉(タクシャ)、茯苓(ブクリョウ)、牡丹皮(ボタンピ)、桂皮(ケイヒ)、附子(ブシ)の8種で構成されており、中心になる生薬は地黄になります。

八味地黄丸は、高齢者に多く用いられます。対して、桂皮と附子を除いた六味丸(87)は小児に用いられることが多くあります。

地黄、山茱萸、山薬には滋養強壮効果があり、体を温めて体力を補います。牡丹皮は血の巡りをよくし、体の隅々まで血液を行きわたらせます。

さらに附子が強心作用、体温を上昇作用、腎機能を改善作用を示して、代謝機能を整えていきます。また、沢瀉や茯苓の利尿効果、桂皮の発汗作用で、体内の水分調節を行います。

そのほか、地黄・山茱萸・山薬には、血糖降下作用が認められています。血糖値が高いことで血管に悪影響をもたらし、末梢神経の伝達が悪くなって、手足のしびれなどが起こります。八味地黄丸は、神経痛や痛みに効果があるため、糖尿病の神経障害の改善にも用いることがあります。

<h2> 八味地黄丸のまとめ</h2>

八味地黄丸は、冷えや頻尿などの排尿障害を伴う高齢者の前立腺肥大や膀胱炎、腰痛などに、まず使いやすい薬であると言えます。特に高齢者の腰痛にはまず使ってみたい一剤という位置づけになっています。

八味地黄丸の強化版とも言われる車前子と牛膝を加えた牛車腎気丸(107)は、むくみやしびれを伴う場合に用いられます。また、不妊治療にも用いられることがあり女性の卵巣の老化防止や男性の精子濃度の上昇を目的として使用されることもあります。
高齢者の薬というイメージがありますが、今後は女性にも使用される機会が増えてくるかもしれません。

証の判断・漢方薬の選択に悩む場合は長崎クリニック浜町漢方外来までぜひご相談ください。

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