十味敗毒湯(ツムラ6 番):じゅうみはいどくとうの効果、適応症

<h2>十味敗毒湯の効果・適応症</h2>

十味敗毒湯は、体力(胃腸)中程度の人の次の症状に適しています。

にきび等の化膿性皮膚疾患・急性皮膚疾患の初期、じんましん、急性湿疹、水虫

成人では1日に7.5gを2~3回に分割して、食前または食間(食後2時間)に水、または白湯でのむか、またはお湯に溶かして飲みます。

<h3>にきび等の化膿性皮膚疾患の初期・じんましんへの十味敗毒湯の効果</h3>

十味敗毒湯は、化膿傾向のある皮膚疾患の初期によく使われる処方です。

にきびへの使用は小さなブツブツがたくさん広がるような場合に適しています。患部に化膿を伴うか化膿を繰り返す場合によく効き、構成生薬も皮膚の諸毒を排出させるというものが多く配合されています。
抗アレルギー作用、抗酸化作用、男性ホルモン代謝酵素阻害(活性型男性ホルモン生成阻害)により皮脂の分泌を抑える作用が見られることがわかっています。

類似処方との使い分けとしては、化膿性疾患において急性期には排膿散及湯(122)を用い、亜急性期に十味敗毒湯を用います。

排膿散及湯(122)は、抗生物質や抗菌剤を併用しないで単独使用する方が速効を得られるようです。

比較的体力があって、患部の湿潤傾向、痒みや口渇を伴う場合は、消風散(22)が適しています。

化膿傾向がなくて、患部が赤黒く、不眠不安のぼせなどの精神神経症状を伴う場合には、温清飲(57)が適しています。

上半身、頭部や顔面が赤みが目立つ場合は、清上防風湯(58)が適しており、にきびによく使われます。

便秘がちで頭から顔面までの湿疹には、治頭瘡一方(59)が用いられます。

にきびという観点では、荊芥連翹湯(50)がよく用いられます。

<h2> 十味敗毒湯の副作用・証が合わない場合の症状</h2>

副作用

十味敗毒湯には、甘草が含まれており、稀な副作用として偽アルドステロン症を起こす可能性があります。

偽アルドステロン症の症状としては、低カリウム血症をおこし、血圧増加、むくみ、体重増加などが表れることがあります。
さらに低カリウム血症の結果として、ミオパチーを起こす可能性があります。症状としては、脱力感、手足のけいれんなどがあります。

肝機能障害や黄疸が現れることがあります。

その他、胃腸障害、悪心、下痢などが起こる可能性があります。

証に合わない場合

病後など体力が著しく低下している時には皮膚症状が悪化する可能性があります。

胃腸が大変虚弱な人の場合、食欲不振や胃部不快感、吐き気や下痢などを起こす場合があります。

<h2> 十味敗毒湯の生薬の組み合わせ、なぜその生薬が選ばれているか</h2>

桔梗(キキョウ)、柴胡(サイコ)、川芎(センキュウ)、茯苓(ブクリョウ)、防風(ボウフウ)、甘草(カンゾウ)、荊芥(ケイガイ)、生姜(ショウキョウ)、撲樕(ボクソウ)、独活(ドッカツ)の10種(=十味)で構成されています。

荊芥、撲樕、防風、桔梗、川芎、甘草は解毒作用があり体質改善に役立ちます。この中の防風、荊芥、独活、川芎は、血管を身体の表面の拡張して血行をよくして、発汗発散を強めて皮膚をきれいにして痒みを抑える働きがあります。

かゆみや赤み等を改善する抗炎症作用は、IL-6産生抑制を示す撲樕、桔梗、茯苓、甘草、生姜、TLR2発現抑制を示す撲樕、甘草、荊芥の2種によるものです。抗酸化作用は、撲樕、荊芥、荊芥が示し、にきびなどに関与する活性型男性ホルモン生成酵素阻害作用は撲樕、荊芥が示します。

構成生薬の中で特徴的な様々な活性を示す撲樕は、ブナ科のクヌギまたは近縁植物の樹皮でワインなどのコルク栓の材料としても身近な存在です。薬効についてはいまだ詳しくは分かっていません。
元々中国の「和剤局方」に記載されていた荊防排毒散とよばれる処方を、華岡青洲先生が日本で手に入る生薬を配合して改良した漢方です。

<h2> 十味敗毒湯のまとめ</h2>

十味敗毒湯はニキビの初期やじんましんや湿疹などに効果があると言われています。 ただし、赤みが強かったり進んでしまっているニキビには効果が期待しにくいともいわれています。
また、日常生活でもストレスをためないようにしたり、スキンケア、食事もバランス良いものをたべる、規則正しい生活をするなど、皮膚の症状を悪化させる因子をできるだけ少なくすることも大切です。

証の判断・漢方薬の選択に悩む場合は長崎クリニック浜町漢方外来までぜひご相談ください。

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