乙字湯(ツムラ3番):オツジトウの効果、適応症

<h2>乙字湯の効果・適応症</h2>

乙字湯は体力(胃腸)中程度の人の次の症状に適しています。

便秘や軽い出血、肛門周囲に痒みや痛みを伴うような、症状が激しくないキレ痔、イボ痔

成人では1日に7.5gを2~3回に分割して、食前または食間(食後2時間)に水、または白湯でのむか、またはお湯に溶かして飲みます。

<h3>キレ痔、イボ痔への乙字湯の効果</h3>

便秘傾向の方の軽度の痔に第一選択とされる漢方です。

便通を促す大黄が入っているため、消化管の運動が促され便通を促す効果がありますが、その働きは弱いので便秘がない人でも乙字湯を飲んだ後に下痢や腹痛がなければ飲むことができます。

他剤との使い分けでは、症状が顕著で体力が充実した便秘がある場合には大黄牡丹皮湯(33)、比較的体力があるタイプでは、便秘がある場合は大柴胡湯(8)、のぼせ傾向があって下腹部に圧痛がある場合は桂枝茯苓丸(25)が適しています。

体力が低下しているタイプで出血性の痔や脱肛の傾向がある場合で痛みが激しいときは当帰建中湯(123)、同じく脱肛があり倦怠感が強い場合は補中益気湯(41)、痔に加えて不正性器出血や下腹部の重い鈍痛が見られるときには芎帰膠艾湯(77)が適しています。

<h2> 乙字湯の副作用・証が合わない場合の症状</h2>

副作用

乙字湯には柴胡が含まれているため、ごく稀に間質性肺炎が生じる可能性があります。

その初期症状である発熱、咳嗽、呼吸困難、肺音の異常(捻髪音)等があらわれた場合には本剤の投与を中止し、速やかに胸部X線等の検査を実施するとともに副腎皮質ホルモン剤の投与等の適切な処置を行うこと、とあります。

この初期症状を感じるときには、速やかに乙字湯の服用を中止して、ただちに医師へ連絡するということを覚えている必要があります。

乙字湯には甘草が含まれており、稀な副作用として偽アルドステロン症を起こす可能性があります。

偽アルドステロン症の症状としては、低カリウム血症をおこし、血圧増加、むくみ、体重増加などが表れることがあります。
さらに低カリウム血症の結果として、ミオパチーを起こす可能性があります。症状としては、脱力感、手足のけいれんなどがあります。

また、乙字湯に含まれる黄芩により肝機能障害や黄疸が現れることがあるため、投与前と投与1ヶ月後の肝臓機能の変化を血液検査で比較して安全性を確認することが望ましいとされています。

その他、過敏症、食欲不振、下痢、腹痛などが起こる可能性があります。

乙字湯に含まれる大黄には子宮収縮作用があり早流産の危険があることから、妊婦・妊娠の可能性のある婦人には不適になります。
また、授乳中の婦人に使う場合は、母乳中に移行して乳児の下痢を起こす可能性があるため注意が必要です。

証に合わない場合

大黄、当帰が含まれているため食欲不振や悪心、下痢などを引き起こす可能性があります。
著しく胃腸が虚弱だったり、食欲不振がある場合は注意が必要です。

<h2> 乙字湯の生薬の組み合わせ、なぜその生薬が選ばれているか</h2>

当帰(トウキ)、柴胡(サイコ)、黄芩(オウゴン)、甘草(カンゾウ)、升麻(ショウマ)、大黄(ダイオウ)の6種で構成されています。

軽度の便秘傾向の人の痔に第一選択とされる漢方です。

便通を促す大黄が入っているため消化管の運動が促され便通を促す効果がありますが、その働きは弱いので便秘がない人でも乙字湯を飲んだ後に下痢や腹痛がなければ飲むことができます。

当帰・柴胡・升麻が痔に対しての鎮痛作用を発揮し、升麻が肛門部の潰瘍発生を抑えていきます。
大黄には便通を促すだけでなく抗菌作用もあります。構成生薬のうち5種類に炎症を抑える働きもあり、効き目を発揮します。

<h2> 乙字湯のまとめ</h2>

乙字湯は痔のファーストチョイスになります。
症状が軽度のときに対応したいのであればもともと食欲不振や下痢がない場合には使いやすい方剤だと言えます。

ただし、妊娠中の女性には使うことができません。

証の判断・漢方薬の選択に悩む場合は長崎クリニック浜町漢方外来までぜひご相談ください。

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